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2005年05月01日

●JR福知山線脱線事故考察

 事故から1週間経過した。報道初期では15人ほどだった死亡者数が、5月1日現在では15時間後に救出された女性の死亡を含めて107人となった。生活の一部である鉄道でこのような大事故が起きると、明日はわが身と思わずにはいられない。亡くなられた方のご遺族の心中を察すると…、という言葉すらこの大事故の前では軽々しく聞こえてしまう。

 さて、今回の事故の原因について、海外メディアが「日本人の鉄道遅延に対する許容のなさ」を挙げているらしい。「イギリスやアメリカでは5分超で遅れと見なすところを、日本は1分でもう遅延である。そんなに急いでどうするんだ。」的な論調である(関連記事)。友人とも話をしたのだが、それは違うでしょ。ということで事故についての考察。

 
 まず、鉄道の時刻が他国と比較して非常に正確である、という事実は全くもって悪いことではなく、むしろ誇りに思うべきことだ。日本の鉄道は現在の社会システムにおいてなくてはならない存在で、われわれがそれを信頼し、そしてそれに依存するのは当然のことと思われる。朝の乗り換えバトル(駅構内を激走する女性の姿とか)なんて、異文化の人たちから見るとありえないだろう。でも信頼しているからこそ、裏切られるとちょっと腹が立ったりもしてしまう。30秒が乗り換え時に命取りになることはあるし、うまく乗り継げなかったら悔しい。だからと言って電車が遅れたことに対して怒鳴り散らしている人を見るといや~な気分になる。そんなに急いでたのならば、代替手段を考えるか文句をいう前にさっさと駅を後にして目的地に向かえばいいのだ。大体こういうクレーマーは時間に余裕がないというより心に余裕のない人達が多い。

 そして、1分超で遅延と見なすのを5分にすると今後鉄道事故はふせげるのだろうか。また、5分で遅延と見なす心に余裕のある諸外国の鉄道ではこのような事故は絶対に起こらないのだろうか。私の中での答えは"abso-fuckin'-lutely not"である。衝突事故に関してはイギリスで1997年(サウス・ウォール)、1999年(ラドブローク・グローブ)、2001年(ヨーク)に立て続けに起きているし、アメリカでは2004年に貨物列車が50両脱線、転覆という事故が起きている(関連記事)。上海列車事故で高知県学芸中学の修学旅行生に多数の死傷者がでたことも、地元というだけあって記憶に新しい。事故件数を単純に比較すると日本のほうが多いかもしれないが、事故件数を稼動中鉄道路線の全運行数で除した「事故発生率」にして比較すると、そんなに諸外国と差はないのではないかと私は思う。

 ということで、日本人の「時間に正確な」傾向が今回の事故を引き起こしたと考えるのはあまりに浅はかな気がしてならない。この事故の原因はおそらく、JRが国内最古レベルのATS(列車自動停止装置)をいまだ使用していたこと、死んだ人を責めるのはなんだか忍びないが運転士の力量、そしてJRの馴れ合い、隠蔽体質に集約されるのではないだろうか。鉄道事故は規模が大きく、一度に亡くなる方も多いのでショッキングではあるが、発生確率は低い。加えて日本の鉄道が世界に誇れる水準を維持しているというのもまた事実である。

 ひとまずわれわれにできることというと、余裕をもってスケジュールを設定し、ぎりぎりの時間に乗らないよう心がけるとか、鉄道に依存するのなら、定時運行を守ってくれている運転士さんの存在をもう少し身近に感じるように努力するとかくらいだ。あの事故の後電車を利用する機会があったのだが、そのとき初めてといっていいほど運転士さんの顔を意識して見た。50代くらいの人で、真剣なまなざしで運転している姿を見たとき、「この人なら大丈夫だろう」となんとなく思ったものだ。逆にあくびなんかしている運転士さんなんかを見てしまうと乗車をためらうわけだが…少なくとも乗るか乗らないか、自分で選ぶことができる。


最後に、事故車両に乗り合わせ、ろっ骨を折りながらも冷静沈着なリポートを完遂したNHK小山チーフアナウンサーに乾杯(関連記事)。


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